ヨルマ・ヒュンニネン インタビュー
Q1)
シベリウス・イヤーである今年、お忙しく活動なさっています。
A1)
世界各地で演奏ができることをとても光栄に思います。記念すべきこの年、多くの人にシベリウスの、そしてフィンランドの音楽の素晴らしさを知っていただきたいです。
シベリウスは西ヨーロッパやアメリカ、そして日本で特に人気がありますね。ドイツ、オーストリアには長らくシベリウスに批判的な評論家がいたことで、あまり受け入れられていなかったのですが、今ではやはり人気があるようです。先日もフランクフルトやミュンヘンで、彼の代表作である「クレルヴォ交響曲」を演奏してきました。
今年に入ってすでに「クレルヴォ」は、トータルで15回も演奏しています。
Q2)
シベリウスの歌曲について、お聞かせください。
A2)
シベリウスの代表作はやはり7つの交響曲でしょう。しかし彼は歌曲の作曲家でもあります。70曲以上も手掛けていて、交響曲で発揮しているユニークな作曲のスタイルが、歌曲の世界でも生きています。
旋律はシンプルでも、ピアノ・パートと重なることで複雑な様相になる。ヴォルフの歌曲もピアノ・パートとの関係が重要ですが、シベリウスの歌曲もまた歌とピアノが溶け合って初めて、一つの音楽として聴こえるのです。
Q3)
今回のリサイタルの曲目は、どのようにして選んだのですか。
A3)
シベリウスの様々な要素が楽しめるように、プログラムを組みました。皆、内に熱いパワーを秘めた、イマジネーションを掻き立てられる曲です。
「黒い薔薇」はとても人気の高い、インパクトのある曲です「水の精」や「テオドーラ」はモダンスタイルの刺激のある曲ですね。「口づけを願う」「春はいそぎゆく」「狩人の少年」は、シベリウスのとても若いときの作品です。
私自身が楽しみにしているのは、女性に捧げたセレナードである、「夕べに」「タイスへの賛歌」「テオドーラ」の3曲。テオドーラとは、古代ローマの皇帝の妻の名です。とても美しい女性だったそうですが、曲自体はユニーク。ピアノ伴奏もクレイジーな感じがします。
実際のシベリウスは、バラードのジャンルが好きだったようですね。
Q4)
ご自身が演奏される時は、どんなところに気を配っていますか。
A4)
シベリウスは、フィンランドのカレリア地方を旅して、その土地の古い人々の歌う民謡を集めました。集めた民謡の旋律はモチーフとして、登場します。曲の内面には、ロマンティックな気分を秘めています。全ての曲にドラマがあり、歌手は演技力が求められる。語られる言葉は力強いストーリーを持っていて、小さなオペラのようです。
「どのように書かれているか分からなければ、歌にはならない」。シベリウス自身が言っていたことです。私もそう思います。
革新的であるように見える曲も多いのですが、そこにも大きなレガートをともなった、美しいメロディックな瞬間があるのを見逃さないようにしなくてはなりません。
Q5)
日本では聴く機会の少ないクーラ、メリカントについてもお話しください。
A5)
クーラ、メリカント、シベリウスはほとんど同じ時代を生きたフィンランドの作曲家です。彼らが活躍した時代は、ちょうどフィンランドに独立の気運が高まっていた時で、そのエネルギーは当時の芸術家たちに大きな影響を与えました。画家、指揮者、詩人、そのなかにクーラ、メリカント、シベリウスもいました。
クーラは、若くして亡くなった作曲家で、シベリウスよりも少し後にうまれましたが、生きていたら、シベリウスと同じくらいフィンランドを代表する偉大な作曲家になっていたでしょう。
メリカントはメランコリックな曲調が魅力で、フィンランドではものすごく人気があります。実は、シベリウスはメリカントの曲のスタイルが好きではなかったようです。しかし彼らは、一緒にフィンランドの独立を望む作曲家同志のサロンに集まっていたと言いますから面白いですね。
Q6)
ピアノ伴奏のライッコネンとの相性はいかがですか。
A6)
ライッコネンはまだ若いピアニストですが、シベリウスを弾く上でとても信頼のおける人です。彼が15歳のときから知っていて、いいアンサンブルを作ることができるでしょう。
インタビュア:産経新聞「モーストリー・クラシック」岡田聖夏
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