フェドセーエフ氏 モスクワ放響
2006年5月20日川崎でフェドセーエフ指揮/モスクワ放送交響楽団のコンサートが初日を迎えました。来日直後にフェドセーエフ氏へインタビューを行いましたのでご紹介します!
来日直前、以前のインタビューは → こちら
Q: ショスタコーヴィチ交響曲10番は、まだ日本では馴染みのない曲で、鑑賞のヒントを教えてください。彼は交響曲に色々なメッセージを含めたと言っていますが、この作品にこめられたものはどんなものですか?
A: ショスタコーヴィチの交響曲第10番はショスタコーヴィチの作曲活動の絶頂期に書かれた作品です。この曲は人類の過去、現在、未来をテーマにしたもので、世界で起こっていることにお互いに注意深く目を向けようというメッセージであり、人間の精神と生命の危機についての予言であり、シリアスで劇的で、哲学的な示唆に富む作品です。ショスタコーヴィチの音楽の本質がよく表れた名曲であると思います。ショスタコーヴィチに限らず、偉大な作曲家というのは誰しも未来を予兆するメッセージを自らの楽曲に託すものではないでしょうか。
Q: マエストロからみたマツーエフ、樫本大進の魅力とは?
A: マツーエフ、樫本大進ともにもう何度も共演し、気心の知れた私の友人であり、いつも楽しく仕事をする仲間です。オーケストラの楽員もそう思っているでしょう。樫本大進は日本という枠を超えてヨーロッパで華々しく活躍する、スケールの大きなヴァイオリニストであり、将来性ある音楽家です。日本で共演することを楽しみにしています。
マツーエフはご存知の通り、チャイコフスキー国際コンクールの優勝者であり、ロシアのもっとも才能ある音楽家の一人であり、世界的な人気を誇るピアニストです。日本で共演するのは今回が初めてです。マツーエフとは来シーズンのパリ公演でもラフマニノフのピアノ協奏曲のソリストとして共演する予定です。
Q: モスクワ放送交響楽団創立75周年、おめでとうございます。半分以上の年月を重ねていますが、感慨をお聞かせください。また今後、どのような活動を展開しますか?
A: モスクワ放送交響楽団創立75周年を記念するフェスティバルは昨年12月に行われ、プーチン・ロシア大統領、ハインツ・フィッシャー・オーストリア大統領を始め、世界各国の著名人、音楽家から数多くの祝電をいただきました。記念式典では私に祖国貢献功労勲章が授与されたほか、11名の楽員に国家賞、ロシア連邦人民芸術家、功労芸術家などの称号が授与されました。そのほか、私個人にはオーストリアからもオーストリアでの顕著な音楽活動に対して勲章が授与され、昨年12月5日にはムジークフェライン(ウィーン)で記念コンサートを行いました。
モスクワ放送交響楽団は名実ともに世界有数のオーケストラとなり、音楽監督に就任以来32年という私の人生の大半を捧げた、私がもっとも愛するオーケストラです。おそらく、楽員も私のことを愛し、評価してくれているのではないかと思っています。
この間に国内外での公演活動のほか、数多くの楽曲のレコーディングも行いました。マーラーの交響曲のほぼ全曲、ショスタコーヴィチの交響曲全曲、チャイコフスキー作品の再録音なども行うなど、波乱に富んだ年月だったと思います。
嬉しかったことや辛かったことなど様々な出来事がありましたが、中でもペレストロイカ(1985年~)以降の10年ほどは経済的に困窮し、楽員の給料が50ドル程度にしからならない時もあり、まさに危機的な状況でした。しかし、プーチン大統領の布告(2005年10月)により助成金*1を受けられるようになり、楽員の生活が安定し、ようやく危機を脱することができ、安心して音楽活動に専念できる環境が整ったと言えます。
お蔭様で世界各国から公演の提案も多数あり、現につい最近、ドイツ、パリ、ウィーン、スイス、オランダでのヨーロッパ公演から戻ったばかりです。この公演では、今年がショスタコーヴィチ生誕100周年に当たることから、交響曲第4番、第7番や映画音楽など演奏される機会の少ない曲をはじめ、ショスタコーヴィチの作品を主体にしたプログラムを演奏し、観客もスタンディングオーベーションで応えてくれ、大成功をおさめたと思います。まもなく日本公演、そして韓国でも公演が始まります。
今回の日本公演の実現に尽力してくれたジャパン・アーツにはとても感謝していますが、ただひとつ残念なことは前回までの日本ツアーで好評だった都市での演奏会が実現できなかったことです。次回にはこうした都市でも公演ができるよう願っています。
今年の秋にはスイス公演が控えています。チューリヒでは2年毎に若い音楽家を支援するためのオルフェウム・フェスティバルが開催されており、日本を始め、世界各国から集まってくる若い音楽家の中から優秀な音楽家を選抜し、一緒にコンサートを行います。
その後、モスクワでベートーヴェンの交響曲第9番をレコーディングする計画があります。ベートーヴェンの交響曲はこれで全曲の録音を完了し、逐次、スイスのレコード会社《レリーフ》からリリースされています。
日本のレコード会社ではポニー・キャニオンやビクターと多くの楽曲をレコーディングしてきましたが、最近は、残念ながら、交流が途絶えており、いつか機会があれば、日本のレコード会社とも仕事ができるよう願っています。
*1
2006~2008年に連邦レベルの芸術・文化団体に対し、団体メンバー個人の経済的補助を目的とした助成金で総額200万ドルを助成する。対象団体としてはモスクワ放送交響楽団、ロシア国立交響楽団、サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場、モスクワ音楽院、サンクト・ペテルブルグ音楽院など。
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