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2007/02/26

黒田恭一さんより

音楽評論家の黒田恭一さんが、2/25血の婚礼・フラメンコ組曲のステージをご覧になって、胸が熱くなる感想を寄せてくださいました。


 アントニオ・ガデスの数ある遺産のなかでも最高傑作と思われる「血の婚礼」に久 しぶりにふれて、あの血も凍るような静寂に悲劇の原型を見たように思った。
新生アントニオ・ガデス舞踊団は、彼らを育て、今は鬼籍にある天才アントニオ・ガデスがもっとも大切にしてきたものを、見事、具現させて、観客の心を鋭く抉った。

 ガデスの「血の婚礼」の公演が充分に成功するためには、踊り手のみならず、その舞台に目をこらす観客の集中力がどうしても必要になる。ぼくの見た2月25日の、オーチャードホールの客席をうめた観客は、むろん、新生アントニオ・ガデス舞踊団の健闘もあってのことだったが、そこに身をおいていて恐くなるような緊張感の支配した静寂をもたらして、ガデスの「血の婚礼」の真髄を感じさせてくれた。

_ccc1121 「フラメンコ組曲」はフラメンコにふれる楽しみの原点を思い出させてくれる作品であり、同時に、現在の新生アントニオ・ガデス舞踊団の実力のほどを端的に示す演目になっていた。すでに「血の婚礼」によって新生アントニオ・ガデス舞踊団の充実ぶりを充分に実感していた観客は、「フラメンコ組曲」を見て、感覚と活力のカンフル剤として機能するフラメンコの威力をあらためて思った。新しいリーダー、ステラ・アラウソの切れのいい、それでいて充分な情感をたたえた踊りが見事だった。しかし、やはり、圧巻は最終章の「ルンバ」での群舞だった。ああ、これがフラメンコだ、と思わずにいられない、熱い瞬間を体験させてくれた。

 アンコールの部分で、全員が舞台中央に集まって、手を大きく上にかざしたとき、彼らの指の先の空中に、一瞬、満足げに微笑んでいるアントニオ・ガデスの顔が見えたように感じた。そのとき、ぼくは、アントニオ、もう心配はいらないよ、彼らはこんなに頑張って、素敵な公演をおこなっているんだから、と胸のうちで呟いた。

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